結婚して7年が過ぎたある日、夫が急に「離婚したい」と言い出しました。
夫の家族は、両親と、夫の下に二人の弟がいました。二人ともスポーツが得意で、高校の全国大会に出たこともあるそうで、両親から見れば自慢の息子達でした。それに比べて夫は、趣味はパソコンで暗いし、誰とでもよく喋る弟達と違って口数が少なく、私から見ても、家族の中で少し浮いた存在でした。特に父親とはあまり気が合わないらしく、お盆やお正月に実家に行った時などは、お酒を飲んでいるうちに二人で言い争いになることもありました。一度は殴り合いになりそうになって、皆で割って入って止めたこともありました。私はと言うと、夫の両親になぜかとても気に入られていて、本当の家族のように付き合っていました。だから心配だったのです。離婚の話なんかしたら、夫の父親が激怒して、殴り合いどころではすまない事態になるのでは・・・と。
夫から話してもらうのはとても心配だったので、私が夫の実家に行って、夫のいない所で彼の両親に離婚の事を打ち明けました。二人とも、ショックで言葉が出てこない感じで、そのうちに夫の母親が泣き出しました。私もつられて泣きました。思えば私は、夫に離婚を切り出されてから、ずっと泣きたかったのに我慢していました。夫の母親の涙を見て、私もこらえ切れなくなりました。「原因は何だったの?」と夫の母親に何度も聞かれましたが、「私にもよく分からない」と答えるしかありませんでした。離婚したい理由を聞いても、夫は最後まで「気が合わないから」としか言いませんでした。そして毎回決まって、「嫌いになったわけじゃない」と付け加えました。夫の答えは私を混乱させました。嫌いになったわけじゃないなら、いつかやり直しがきくんじゃないかと思ってしまうからです。夫の両親は離婚の事を聞いて、取り乱しはしませんでしたが、本当に悲しそうでした。その日、私が帰った後、二人で朝まで泣いたのだと後で聞かされました。私も、夫の両親の事が大好きで、自分の両親と同じくらい大事に思っていたので、離婚して、彼らに会えなくなるのが本当に嫌でした。一度築いた関係を突然絶たれることは、誰でも嫌な事だと思います。ましてや、本当の家族のように思っていた人達と会えなくなるのは、本当に辛いことでした。