結婚して7年が過ぎたある日、夫が急に「離婚したい」と言い出しました。
次の日の朝、夫の母親から電話がかかってきました。用件は離婚の事しかないのは分かっていましたが、何を言われるかは予想していませんでした。母親は疲れた声で、「あなたは私達の味方でいてね」と言いました。何の事だかよく分かりませんでしたが、私と離れたくないのだろうという事は分かったので、とりあえず「うん」と答えました。その日は日曜日だったので、どこかにご飯でも食べに行こうと言われ、私はまた夫の実家へ行きました。夫の父親の車で、三人でファミレスに行きました。両親は二人ともショックで食欲がないのでは?と私は心の中で心配していましたが、いつも通り普通に食事をしていました。誰も離婚の事には触れず、よくある世間話のようなどうでもいい話ばかりしました。夫の両親は、二人とも普段はどちらかと言うと口数が多いほうでしたが、その時は沈黙になるのを恐がるように、必死で喋っている感じでした。楽しいのに、誰も『核心』に触れないせいで、そこには緊張感がありました。夫の父親は、額にびっしょり汗をかいていて、私のために、なんとか『楽しい場』にしようとしていると感じました。もうすぐ離れ離れになってしまう私に対して、良い思い出を作ろうとしてくれているのだと思いました。ですが、それは私の勘違いでした。
次の日、夫が急に家に帰ってきました。何か忘れ物でも取りに来たのかと思ったら、突然「俺の両親にはもう二度と会うな」と言ってきました。「なんでそんな事言われなきゃいけないの?」と言い返すと、「お前、裏でセコい事やってるじゃないか」と言われました。何の事だか、私にはまったく分かりませんでした。「何の事?」と聞くと、夫は昨日の夜、両親から突然呼び出されて実家に行ったとのことでした。そこで父親から、離婚を考え直すように言われたのだといいます。そして、その理由として、私が夫の両親に対して、「離婚しても帰るところがない。私はずっとあなた達の子どもで居たい」と泣きついてきたのだと言われたそうです。私は、夫の両親に、そんな事は一言も言っていません。夫の両親は、なんとか私達の離婚を食い止めようと、作り話までして夫を説得しようとしたのです。「とにかく、それは作り話で、あなたは誤解している」と、夫に言いました。夫は「なんだ、嘘だったのか」と言って帰って行きました。